輪郭の家

家は、本来それ自体で完結するものではなく、多様な関係性を内包しながら絶えず変化し続けるものです。ここで言う関係性とは、中と外、街と家、家族構成、ライフスタイルなど様々な要素を指します。どうしたらこれらの変化に柔軟に対応しながら長く使える家をつくることができるのかについて考えました。

そのために、まず家の形について考え始めました。家の輪郭を描くことで、内側と外側の境界が生まれます。この形を調整することで、室内には多様な光や風、風景を取り込み、屋外には様々な大きさの庭をつくり出します。また、十分な厚みを持った外壁は断熱性や遮音性を高め、室内に快適な環境をつくります。

家に必要な機能を外壁に託すことで、室内には大らかなワンルームが生まれます。この大空間はグリッド状の木造軸組で支えられ、カーテンや建具などのパーティションや家具を設置するガイドにもなり、自在に間取りを変化させることができます。大きな吹き抜けには将来的に床を増築することも可能です。道路に面した大きな空間は、例えばカーテンなどで仕切ることで、店舗やアトリエなどとして活用できます。空間に機能を固定せず、その時々の暮らし方に合わせて住まい手自身が場所をつくることができます。

中と外を形作る輪郭があれば、ひとまず家は完成します。しかし、それは同時に次の生活の始まりでもあります。木造軸組で作られた多様な輪郭の周りでは、さまざまな関係性が生まれ続けます。これらはすべて、柔軟に住みこなすことのできる暮らしの始まりとしての家をイメージして考えました。